「お葬式は、親しい身内だけでこぢんまりと行いたい」 「家族葬は費用も抑えられるから」
近年、このように考え、家族葬を選ばれる方が増えています。しかし、「家族葬=安価で気楽」というイメージだけで安易に選択し、後悔されるケースが少なくないことをご存知でしょうか。
今回は、費用の側面から家族葬の実態を解き明かし、故人様とご遺族にとって本当に価値のあるお見送りとは何か、今一度「一般葬」の持つ意義に光を当てて考えてまいります。
なぜ?「家族葬は安くない」と言われる3つの理由
多くの方が抱く「家族葬は安い」というイメージは、必ずしも正しくありません。むしろ、ご遺族の最終的な自己負担額は、一般葬よりも高くなることさえあるのです。その理由を3つのポイントから解説します。
1. 葬儀の基本料金は人数に左右されない
まず大前提として、葬儀を執り行うために最低限必要な費用(ご遺体の搬送・安置、お棺、火葬手続き、式場費用、人件費など)は、参列者の人数が10名でも100名でも大きく変わりません。料理や返礼品の費用は減りますが、葬儀の根幹をなす基本料金は、規模に関わらず発生するのです。
2. 「少しでも良いものを」という心理が単価を上げる
参列者が少ない分、「故人のために、せめて祭壇は華やかにしてあげたい」「好きだったお花で棺をいっぱいにしてあげたい」といったお気持ちから、一つひとつのグレードを上げていく傾向が見られます。結果として、基本プランから様々なオプションが追加され、お見積り総額が当初の想定を上回ってしまうケースは珍しくありません。
3.【最重要】香典収入が見込めず、自己負担額が増える
これが最も大きなポイントです。家族葬では、参列者が少ない上に、「参列者への負担をかけたくない」という理由から香典を辞退されることがほとんどです。
一方で、一般葬では多くの参列者からお香典をいただきます。このお香典は、ご遺族の葬儀費用負担を大きく軽減する役割を持っています。
【費用負担のイメージ】
- 一般葬: (葬儀費用総額)-(香典収入) = ご遺族の自己負担額
- 家族葬: (葬儀費用総額)-(ほぼゼロ) = ご遺族の自己負担額
例えば、100万円の葬儀で60万円の香典をいただいた一般葬の自己負担額は40万円です。一方、費用を抑えて80万円の家族葬を行っても、香典がなければ自己負担額は80万円となり、最終的な持ち出しは家族葬の方が大きくなるのです。
今こそ見直したい「一般葬」が持つ、かけがえのない価値
費用面だけでなく、一般葬には家族葬にはない、非常に重要な役割と価値があります。
1. 社会全体で故人をお見送りする「公の儀式」
お葬式は、ご遺族だけのものではありません。故人様が生前お世話になった会社関係の方、ご友人、ご近所の方々が、公の場で正式にお別れをし、感謝を伝えるための大切な儀式です。多くの方に見送られることは、故人様が生きてこられた証であり、その功績を称えることにも繋がります。
2. その後の弔問対応が減り、ご遺族の負担を軽減する
家族葬の場合、葬儀後に訃報を知った方々が、次から次へとご自宅へ弔問に訪れます。その都度の対応は、心身ともに疲弊しているご遺族にとって大きな負担となり、「いつまでも落ち着かない」という状況を生み出しかねません。
一般葬であれば、儀式の場で一度に挨拶やお別れを済ませることができるため、ご遺族が早く日常を取り戻し、故人を偲ぶ静かな時間に集中できるという、長期的なメリットがあるのです。
3. ご遺族の知らない故人の一面に触れられる
参列者の方々から「昔、故人にはこんなことで助けられた」「こんな面白い一面があった」といった思い出話が聞けるのも、多くの方が集う一般葬ならではです。ご遺族の知らなかった故人様の人柄や功績に触れることは、悲しみを癒し、故人をより深く偲ぶための、何物にも代えがたい貴重な機会となります。
まとめ:故人とご遺族にとって、本当にふさわしいお見送りを
家族葬という選択肢が生まれたこと自体は、時代のニーズに合ったものであり、決して否定されるべきではありません。しかし、「安いから」「気楽そうだから」という安易な理由で飛びつくのは大変危険です。
お葬式は、やり直しのきかない、たった一度きりの大切な儀式です。目先のイメージだけでなく、故人様が生きてこられた社会的な関係性や、残されたご遺族の未来まで見据えた上で、どのような形でお見送りすることが最もふさわしいのかを、じっくりとご検討いただくことが重要です。
私ども末留葬儀社は、ご遺族のお考えや故人様のご意志を丁寧にお伺いし、費用面のご相談も含め、一般葬、家族葬、それぞれのメリット・デメリットを誠心誠意ご説明させていただきます。後悔のないお見送りのために、どうぞお気軽にご相談ください。